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日本弁護士連合会への人権救済申し立て(元TOKIO国分太一さんの件)

令和7年10月に、もとTOKIOのメンバーである国分太一さんが、弁護士を代理人に立てて、日本弁護士連合会(以下、「日弁連」)に人権救済申立をされたという記事がマスコミで報道されました。
「コンプライアンス上の問題行為」を理由に国分さんをバラエティー番組から降板させた日本テレビの対応において、「コンプライアンス上の問題行為」が具体的にはどの行為を指すのか明らかにしていない点などを問題視しているようです。

ここでは、国分さんの「コンプライアンス上の問題行為」や日本テレビの対応の評価はさておき、日弁連への人権救済申し立て」の内容がどのようなものか、の解説を行いたいと思います。

日弁連は弁護士が加盟する団体ですが、強制加入であり、加入しないと弁護士活動ができません。日弁連には、様々な委員会が設けられ、全国各地の弁護士がその委員会のメンバーになり、それらの委員会において様々な活動をしています。委員会は月に1回など定期的に開かれ、委員である弁護士は委員会に出席するほか、委員会の活動に必要な仕事をします。基本的に無報酬です。私も、日弁連の23条照会の委員会に所属していたことがあります。また、すべての弁護士が日弁連の委員会に所属しているというわけではありません。

人権救済申し立ては、日弁連の人権擁護委員会において、人権侵害の被害者や関係者から人権救済申し立てを受け付け、申し立て事実等を調査し、人権侵害またはその恐れがあると認められれば、その除去を目指し、人権を侵害した相手方等に対して警告・勧告・要望などの措置を行うものです。

私は、刑務所、拘置所、入国管理局内における人権侵害救済申し立てが多いのだろうというイメージを持っておりました。実際に日弁連のサイトを見ると、確かに、刑務所、拘置所、入国管理局といった、収容施設における人権侵害、刑事事件における人権侵害を問題にしているものが多いです。やはり、刑事事件や収容施設においては、人権侵害が起きやすい環境がありますので、自然とそうなるのでしょう。
それ以外では、名古屋城天守閣にエレベーターの設置を求める人権救済申し立てや、ヘイトスピーチに関する人権救済申立などがありました。

実際に申し立てをした場合の流れですが、まず人権擁護委員会で、取り扱えるかについて、簡易審査をします。取り扱うことになった場合、予備審査が行われます。審査の結果、調査を行うことにより人権侵害またはその恐れがあると認定できる可能性がある場合は、本調査が開始されます。

日弁連は国家機関ではなく、強制捜査権などはないので、調査の権限や方法には限界があり、調査を申し入れられても回答を強制することはできませんが、多くの場合で回答が得られているそうです。
本調査の結果、人権侵害またはその恐れがあると認められた場合は、措置が行われ、そうでない場合は、措置は行われません。
措置には、警告、勧告、要望、意見の表明、助言・協力、再審査請求支援等があります。
これらの措置には、強制力はありません。しかし、日弁連が、人権侵害またはその恐れがあると認めたという事実は一般的には重く受け止められると思いますので、影響力はあると思います。